「で、あなたはどうなの?」

相手の話を聞いているあいだは平気なのに、この一言で急に黙ってしまう。そういう人は、きっと少なくないと思います。

僕は恋人から「何を考えているかわからない」と言われ続けました。考えていなかったわけではない、と今は思っています。

自分のことが話せないのは、めずらしい悩みではないはずです。この記事では、話せなくなる理由と、相手の話のあとに一言だけ自分を足すやり方をまとめました。この記事は、聞き役は苦にならないけれど、自分の話になると止まってしまう人に向けて書いています。

先に結論:自分の話は「一言だけ」足せばいい

最初に、この記事の結論を書いておきます。

  • 長く話す必要はありません。相手の話のあとに「一言だけ」自分のことを足す、という方法があります
  • 初対面の実験では、片方だけが話すより、交互に話したほうが相手への好意が高かったと報告されています
  • 聞き役をやめる必要はありません。聞き役のまま、ときどき一言だけ自分を出せばいい、と僕は考えています

自分の話が苦手なことで、自分を責めなくて大丈夫です。僕自身、今も得意ではありません。

自分の話になると止まってしまう、よくある理由

自分の話が出てこない理由は、人によって違います。よく挙がるのは、次のようなものです。

「面白い話をしなければ」と思ってしまう

面白い話をしなければ、と思うほど言葉は止まりやすくなります。自分の毎日は平凡で、話す価値がないと感じる人もいるでしょう。

感じたことが、すぐには言葉にならない

子どものころ、僕は読書感想文が書けませんでした。自分が何を思っているのか、言葉にできなかったからです。僕の場合は、感じていないのではなく、言葉になるまでに時間がかかっていたのだと思います。

聞き役でいるほうが安心できる

聞いている限り、自分の話を評価されにくい、と感じやすいものです。だから、聞き役でいるほうが落ち着く、という人もいると思います。

どれも、責める材料にしなくていいものです。理由がわかると、対策も選びやすくなります。

研究が教えてくれた「交互に少しずつ」の力

自己開示(自分のことを相手に話すこと)には、たくさんの研究があります。そのなかから、話し下手の人にとって参考になりそうなものを2つ。

交互に話したほうが、相手への好意が高かった

アメリカの社会心理学者スーザン・スプレッカーらは、2013年にこんな実験を報告しています。初対面の大学生が2人1組になり、オンライン通話で話しました。

一方の組は、質問と答えを交互にやりとりしました。もう一方の組は、最初の会話では片方だけが話し、もう片方は聞くだけでした。

結果は、交互に話した組のほうが、相手への好意や親しさ、会話の楽しさを高く報告したというものでした。スプレッカーらは2015年の論文でも、同じ傾向を報告しています。交互に話した組のほうが惹かれ合う度合いが高く、差は最初の会話のあとで特に大きかったそうです。

ここから僕が受け取ったのは、こういうことです。大事なのは、話す量ではなく「やりとりがあること」かもしれない。これは研究の結論ではなく、僕の解釈です。

少しずつ深まる会話は、雑談より親しさが高かった

もうひとつは、心理学者アーサー・アロンらが1997年に発表した研究です。2人1組で45分間、自己開示と関係づくりの課題に取り組みました。課題は、少しずつ個人的な内容へ深まっていく作りです。

比べる相手は、同じ時間を雑談の課題で過ごした組です。最初の実験では、深まる課題に取り組んだ組のほうが、会話後に強い親しさを感じたと報告されています。

この研究は、「いきなり深い話」と「少しずつ」を比べたものではありません。それでも僕は、深い話を急がなくていいと受け取りました。浅いところから少しずつ、で十分だと思うのです。

もちろん、ひとつの研究がすべての場面に当てはまるわけではありません。どちらも、実験室で用意された課題に沿った会話です。

聞き役のまま、一言だけ自分を足す3つの型

ここからは、聞き役のまま使える型を3つ紹介します。どれも、相手の話を聞いたあとに「一言だけ」足すものです。

型1:「僕も〜です」と、同じところを一言

相手「最近、朝起きるのがつらくて」自分「わかります。冬は布団から出られないです」

これだけで大丈夫。自分の話を広げる必要はありません。言い終わったら、「どうやって起きてるんですか?」と相手に返す。それで十分です。

型2:「僕は〜でした」と、違うところを一言

相手「休みの日はずっと外に出てます」自分「いいですね。僕は家でゆっくりするのが好きで、この前は本を読んでました」

相手の話をまず受け止めてから、違うところを一言。違う話でも、相手が「この人はこういう人なんだ」と知るきっかけになることがある、と僕は考えています。

型3:「それ、〜だと思いました」と、感じたことを一言

相手の話を聞いて感じたことを、そのまま一言にします。「それ、大変でしたね」「それ、ちょっと笑いました」で大丈夫です。

感想も、自己開示のひとつです。出来事を話さなくても、感じたことを伝えれば、相手にはあなたが少し見えてきます。

一言も出てこない日のために

一言も出てこない日もあります。僕も今も、うまく話せない日があります。

そんな日は、「話すのが少し苦手なんです」と正直に言ってしまう方法もあります。これも自己開示のひとつです。ただ、場や相手によっては重く受け取られることもあります。言うかどうかは、相手との距離で選んでください。

聞き役でいられることは、それだけで大きな強みです。聞くことの力については、別の記事に詳しく書きました。→ 「へえ、そうなんだ」だけで会話が続く理由

「何を考えているかわからない」と言われてつらいときは、こちらもどうぞ。→ 「何を考えてるかわからない」と言われるあなたへ

よくある質問

自分のことを話すのが苦手なのは、人見知りだからですか?

人見知りと関係があることもありますが、それだけが理由とは限りません。理由は人それぞれなので、決めつけなくて大丈夫です。理由がはっきりしなくても、一言だけ足す練習は始められます。

自分の話をしないと、嫌われますか?

紹介した研究は、嫌われるかどうかを調べたものではありません。実験室での初対面の会話で、交互に話したほうが好意が高かった、という報告です。嫌われるかどうかは相手や関係によって違うので、心配しすぎなくて大丈夫です。話したくなったときに、一言足すだけでもやりとりは生まれます。

何を話せばいいか、まったく思いつきません

その日に見たもの、食べたもの、感じたことで十分です。「面白い話」である必要はありません。相手の話と同じところ、違うところを一言で言う型から試してみてください。